数学帝國への逆襲 (西春自習質問教室のブログ)

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宇宙2-4.太陽系d「minor planet」

宇宙2-4.太陽系d「minor planet」

少し前までは、minor planet というと小惑星のことだったのだが、
このごろは他にもいろいろ見つかったので、
小惑星」「彗星」「太陽系外縁天体」の総称ということになっている。

小惑星 asteroid

火星と木星の間が広すぎる、という観点から、
そこに見つかっていない小型の惑星があるのではないか、とされ、
特に天王星が見つかってからは、発見合戦になったのだが、
(自粛警察ではなく、天の警察と呼ばれた)
1801年に見つかったのが、ケレス(Ceres セレスとも呼ぶ)だ。

天王星に次いで新惑星が発見された、と喜んだのはよいのだが、
次の年に、似た場所にパラスが、次いでベスタ、ジュノーと発見され、
いくつかあるらしい、とか、そんな程度ではなく、
現在までに、100万個近くの小惑星が見つかっている。

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表面は想像図

小惑星は、公共良俗に反しない限り、発見者が名を付ける権利を持つ。
昭和の後半は、金満日本人が大活躍して見つけまくっていたので、
日本に関係のある名前を持つものは多い。

最初は堅く、地名や昔の偉人の名前とかを付けていたのだが、
そのうち日本人は開き直って、
Kamenrider , Takoyaki , Hanshintigers とかいう名前の小惑星もある。
小惑星Anpanman が軌道を変え地球に突っ込んできたらどうするんだ?

とはいえこのごろでは、名前を付けるのが発見に追いついていない。

②彗星 comet

日本語では「ほうきぼし」だ。
西洋では、魔女はほうきに乗って飛ぶ、という伝説にもなった。
ニンバス2000とかは、ここから来ている。

太陽系を楕円軌道を描いて回る氷とチリの塊で、
太陽に近づくと、太陽風と呼ばれるものの影響で尾をなびかせる。

国史に書いたように、
かつてはこれは、王朝が滅亡する前兆だのと言われたのだが、
エドモンド・ハレーが、1682年に、
今年のこの彗星は1607年のものと同一で次は1758年に来る、と予言した。

ハレーはその前に死んだが、1758年に空に現われた彗星で正しさが証明され、
その彗星は、ハレー彗星と呼ばれることになった。

1910年の接近では、ハレー彗星の尾の中を地球が通ることがわかり、
彗星の尾は青酸化合物でできている、という話が伝わって、
人類滅亡騒ぎになったらしいが、何事もなく終わった。

私はハレー彗星自体は1986年に観ているのだが、
この接近時は、全然明るくならなかったので、
高性能望遠鏡で写真を撮っている人に、頼み込んで見せてもらった。

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ハレー彗星 前回接近時

公転周期は75年。次に来るのは2061年だ。
余談だが、知人に、彼女とハレー彗星を観に行って、
次に来る時にも二人で観よう、とプロポーズして、断られた人がいる。
(涙なしには語れないなこれは)

こんな事情で、彗星は、発見した人の名前が付く、早い順に3人まで。
国史に載せたイケヤ・セキ彗星は、池谷さんと関さんが見つけた。
二人とも、日本人として超有名なコメットハンターだ。

③太陽系外縁天体

2002年に、後にクワオアーと名付けられる天体が見つかった時、
冥王星の外側を回る太陽系第十惑星か、とも言われたが、
すぐに、冥王星より小さく惑星と言い難い、ということになった。
(その前に、冥王星の近くにアルビオンが発見されている)

さらに、クワオアーより大きいセドナが発見され、
冥王星よりも大きいエリスが発見されるにおよんで、
(精密な測定では、冥王星の方がわずかに大きい)
これをどう考えて良いのか、という話になった。

全部惑星として認めよう、という話もあったが、
それは乱暴だろう、ということになって、
冥王星を惑星から外し、エリスやケレスとともに準惑星にした。

ちなみにアメリカは、この決定を認めていない。
なぜなら、冥王星を見つけたトムボー博士はアメリカ人だからだ。
アメリカは最初からそういう国で、
他の国がメートルを使っても、頑なにヤードを使い続け、
他の国が℃を使っても、F(ファーレンハイト温度)を使い続け、
サッカーはマイナー競技で、アメフトとベースボールがプロ化する。
そういう国なのだ。

しかしこれは呼び方の問題で、冥王星が何か変わるわけではない。
当時、ネットでは、冥王星を擬人化するネタ話が流行した。
他の惑星に冥王星が「俺、惑星やめるんだ」と告白したり、(部活か)
女の子バージョンで「私もう、惑星であることに疲れちゃった」とか。
探して見てみると、けっこう面白い。
てか、この才能を他で活かせないのか、と思う。

とにかく、海王星の向こう側に小惑星帯のようなものがあるのだろうと、
この辺で発見された天体をまとめて、研究者の名前を取り、
エッジワースカイパーベルト天体、と呼んでいる。
(Edgeworth-Kuiper belt object、略して EKBO

現状で、1000個ほどの天体が見つかっているのだが、
なにぶん遠くて暗いので、なかなか小惑星ほどには増えない。
また、海王星最大衛星のトリトンを含めいくつかは、
このEKBOを、惑星が捕獲したと考えられている。

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冥王星カロンは二重惑星という考え方もある

オールトの雲

EKBOよりさらに外、太陽の引力が届くギリギリのところまでは、
彗星を作り出す氷とチリが球状に取り巻いていると考えられ、
これをオールトの雲と呼ぶのだが、まだ見つかってはいない。
というより、暗すぎて今後も見つかるのかどうか。
理論的に、無いとは考えられない、ということだな。

ところが、2017年に見つかったオウムアムアと名付けられた天体は、
明らかに太陽系の外から来て、太陽系の外に出て行く天体だった。

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オウムアムアの想像図

初の恒星間天体であることと、写真を撮ったら葉巻型をしていたことで、
(恒星間天体はその後にもいくつか見つかった)
宇宙人が飛ばしたのではないか、とか言われたが、
まあそうであったところで、地球人ごときには何もできないよ。
月にしか行けない原始人が、何かしようとしても無駄。

というわけで、これで太陽系の果てまで来たのだが、
まだ終わりじゃないからね。