宇宙0-2.地球b「軌道エレベータ」
静止衛星、というものを、まず説明する。
高度36,000km(35,786km)で、人工衛星に地球の周りを回らせると、
地球の自転の速さと釣り合って、(正しくは角速度が釣り合って)
地表から見ると、空のある一点に静止して見えるので、この名がある。
知らないかい?
君たちの家にもあるBSとかCSとかのアンテナの、向いている先だよ。
日本の静止衛星なら、ひまわり(1~9号、気象衛星)が有名だ。
繰り返すが、静止衛星は、地表からは空の一点に止まって見える。
だったらそこからその真下までエレベーターを建設すれば、
爆弾の塊に乗る必要はなく、安全かつ安価に宇宙まで行けるのではないか、
それが軌道エレベータの発想だ。
今まで実現できなかったのは、
36,000kmを切れることなく繋げる素材など、無かったからだ。
絹糸のように軽くても、鋼鉄の強度があっても、
静止衛星から地表に垂らしたら、どこかで必ず切れるのだ。
つまり、
糸のように軽く、ダイヤモンドのように丈夫な素材が必要だ。
ところがそれが今、開発されてきている。
名前を、カーボンナノチューブと言う。
カーボンナノチューブは、医療の世界でも応用が期待されているが、
理論的に、密度は1.5前後になるはずで、アルミホイルより軽い。
そして引っ張る方向の強度は、ダイヤモンドを超えることが可能だ。
同じ炭素でできているわけだからな。
イメージとしては、加工できるダイヤモンドというわけだ。
(面倒だから以下カーボンナノチューブは、CNTと書く)
炭素の同素体として、黒鉛やダイヤの他に習ったフラーレンの応用で、
現実に今、ダイヤモンドの硬さの3倍程度の硬さのものができている。
名前は、ハイパーダイヤモンドだ。
ダイヤが一番硬いというのは、もう古い。
だから、軌道エレベータは現実段階に入っていると言える。
技術的に少し足らない、と書いたのは、
今のところ、ダイヤモンドの3分の1程度の硬さまでらしい。
これがダイヤの硬さを超えた時、建設は具体的になる。
静止衛星から、地上のステーションまでCNTを何本も垂らし、
束ねて丈夫にして、周りを固め、それにエレベーターを繋ぐ。
それだけでできるのだ、軌道エレベータは。
いや、それだけというと語弊がある。
高度36,000kmまでエレベーターで行くわけだから、
普通のビルにあるようなエレベーターなら、1年がかりになる。
(地球一周が約40,000km)
そのエレベーター自体、時速500km程度の速さが必要になるだろう。
それでも、4~5日はかかる計算になるが。
そんなものがあるのかって?
知っているだろう、日本人ならば。
リニアモーターカー(和製英語だぞこれ)だよ。
書いておく。
CNTは、最初はロシア(かつてのソビエト)の科学者の発想だが、
実現したのは信州大の遠藤先生で、量産化は名城大の飯島先生だ。
世界初の商品化は、太陽日酸と東邦化成、
そしてリニアモーターときて、造るのは大林組。
軌道エレベータは、オールジャパンの技術で実現可能なのだ。
だから書いている、君たちは宇宙に行けるのだと。
日本に生まれて、良かったってことだ。
現実のリニアモーターは、超低温が必要な技術だ。
ある程度上空になると、最初から低温なので要らないと思うが、
地表付近の超高温(摂氏20℃くらいのことだよ)をさけるために、
地表のステーション付近には、太陽光をはね返す金箔が塗られると思う。
日本の技術で日本の会社が造る、黄金の輝きを放つ空の彼方へ続く塔。
予想しよう、世界初の軌道エレベータの名前は「金閣」になる。
「バベル」とか「ビーンツリー」(豆の木だ)も候補だが、
それは他国が造るものに譲ろう。
この予想が当たるかどうかより、
私がそこまで生きていられるかどうか、なんだけどね。