中国史の大前提
本題に入る前に、中国史を知る上での前提条件を書く。
中国をよく知る人なら当然の内容なので、
以下のことをわかった上で、先を読んでほしい。
① 中華思想
伝説の王朝である夏に始まって、
殷も周も黄河の蛇行した部分から出たことにより、
中国人はここが「世界の中心」と思ってしまった。
黄河中流域の平野部を中華または中原と呼び、
モンゴルや女真に征服されても、
ヨーロッパに植民地化されかかっても、
漢民族は「世界の中心である大都会に住む誇り高き民」であり、
周辺民族は「ド田舎に住む蛮族」なのだ。
楚や東晋、南宋とか遼とかは、
ヨーロッパ諸国に比べれば充分に広い領土をもつが、
黄河中流域を支配しない以上は、地方政権としか評価されない。
これが現代まで脈々と続く「中華思想」というものだ。
自尊心というものは取り出して比べられるものではないが、
中国人のプライドは滅多やたらに高い。
下の写真を参照されたい。
これは、東日本大震災の時に救援に来てくれた某中国人富豪だ。
隣国の危機に駆けつけるその行動には、深く謝意を述べたいが、
それはまずこうやって、
「服を着替えてポーズをとって写真を撮ってから」なのだ。
これが中国人なのである。
このごろ我が日本人は、中国人とそんなに仲が良くはないのだが、
せめてこのくらいは中国人の気質を知った上で、判断することを勧める。
さて、周辺異民族には、
北狄(ほくてき)、東夷、南蛮、西戎(せいじゅう)があり、
合わせて「胡」(こ)と呼ぶ。(訓読み「えびす」、主に北と西)
全て、古代中国人にとって人間と見なす対象ではない。
だから今でもチベット族やウイグル族を平気で弾圧するわけだな。
ちなみに「東夷」とは、現在の山東半島付近に住んでいた人たちで、
日本はもちろん、朝鮮半島のことですらない。
日本なんて、大鮫のいる嵐の海のそのまた先にある蓬莱の候補地で、
もはやファンタジーワールド、アレフガルドかロトゼタシアだ。
日本が東夷に加えてもらえたのは「後漢書東夷伝」あたりからである。
したがって、中国に「固有の領土」などはない。
尖閣諸島? 違う。日本もアメリカも中国の領土だ。
中華皇帝とは、世界の全てを所有するもの、である。
太陽がひとつであるように皇帝もひとり、というのが鉄則だ。
ローマのインペラートル(エンペラー)は、第一将軍の発展形で、
これを「皇帝」と訳すのは、実は微妙に違う。
ドイツやロシアのカイザー(カイゼル、ツァー、ツァーリ)は、
ローマ皇帝に認められた帝位なので、より近い意味は「副帝」だ。
キングつまり王は、皇帝からその土地の支配権を認められた者である。
② 中国人の名前
例えば「諸葛亮孔明」なら諸葛が姓、亮が諱(いみな、本名)。
本名を「いみな(忌み名)」と訓読みするのは、
親兄弟や主君以外が本名を呼ぶことは失礼極まることだからで、
普通は字(あざな)である孔明の方で呼ぶ。
漢人は姓も諱も字も一字、異民族が二字というのが基本だったが、
人口の増加で区別が付かず、漢の頃には諱も字も二字が多くなった。
新の王莽が一度禁止にしたのだが、
三国から南北朝の混乱期にまた二字が多くなり今に至る。
後の世の我々から見たら、どちらが有名か、ということで、
劉邦季は諱の方で、項籍羽は字の方で有名になってしまった。
③ 四神
中華の四方を護る霊獣。
これも今の世にまで影響が大きいものだ。
東にいるのは青龍、四季は春、色は青(または緑)、
南は朱雀、四季は夏、色は赤、
西は白虎、四季は秋で色は白、
北は玄武(亀のモンスター、尾は蛇)、冬で黒。
そして真ん中の大地が麒麟、色は黄で黄河や黄砂の色だ。
地に黄河が流れ、天には銀河が流れる。
これが中国人の「世界観」というヤツだな。
したがって、ドラゴンズの青いユニフォームは当然で、
南門は朱雀門と呼ばれ、白虎隊だの北原白秋だのに使われる。
君たちの現在を「青春」と呼ぶことも、古代中国から来ているのだ。
この世界観は陰陽五行説と結びついて、中国の科学を遅らせる原因になった。
各王朝も色が決まっていて、
漢の色は青だったので、次は黄色だと黄巾の乱は起こり、
元の支配に対抗し宋(色は赤)を再興しようと紅巾の乱は起こった。